故郷

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オレンジの実をつける大木が村外れの丘にある……住人以外は誰も名前を知らないような寂れた村、そこに住んでいた男は成功を夢みて村を飛びだし、都会へと旅だった。 ちっぽけで、外れの丘にある黄色い実をつける大木だけが唯一の自慢のような村に見切りをつけて、家族も捨てて二度と戻らぬ覚悟で都会に旅だった男がいた。たが都会で彼は様々な苦難に遭遇し、ぼろぼろとなって何もかもを失った。 男は懐かしさに心を焦がされるように、何もなかったが自分の全てがあった故郷へと戻ってきた。たが故郷は既に廃虚となっていた。誰もいない村……自分の生まれた家もくちはてて、村外れの丘にあった大木も切り倒され、切株だけが残っているだけだった。 自分にはもう何も残っていないことを悟った男は、村外れの切株の横に蹲って涙が枯れるまで泣きつづけた。
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