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「お母さーんっ!!!!」
ドタドタドタッ
古針家は今日も、一羅のこの一言で始まる。
一羅はバタンッとドアを開け、母と妹と父のいるリビングに慌ただしく入ってきた。
「何で起こしてくれないのさ!」
一羅はテーブルのうえにのっている食パンを、口に含んで母を睨んだ。
「あら、何度も起こしたわよ?
起こしに行くたびあなたが『あと5分』って言うから遅れたんじゃないの。」
「もぅっ!そーいうときは無理矢理起こしてよ!
ぶん殴ってもいいから!」
「いつだったかしら?
この間ぶん殴ったらあなた、私に向かって目覚まし時計投げてきたじゃない。」
「殴ったのかい!!
まぁいいや、とりあえず
今は急ごう!
陸(リク)!今日の夕方のドラマの再放送録画しておいてね!」
一羅はパンをくわえたまま、妹の陸に話をかけた。
が、
「やだ。」
拒否された。
「反抗期?!
あーもぅっ!このままじゃ遅刻だぁ!」
ばたばたとスクールバッグを持ち家の中を駆ける。
玄関で靴を履き、髪もボサボサのまま、一羅は外に出た。
「行ってきまー…」
バタンッ
一羅が起きてから、家を出る数分間は、毎回『台風のようだ』と父は言う。
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