始まり

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ある夏の夜、松久穂信(マツヒサ ホノブ)は夏休みが始まったばかりの高校の友達たちと一緒に一家4人が自殺したと言われている家に男子3人、女子3人の6人で来ていた。 僕はこういった怖い話などは全くダメだ。 でも、親友の櫻井直人(サクライ ナオト)と橋下弥(ハシモト ワタル)に乗せられてまんまとここに来てしまっていた。 内心、女子たちの前でカッコ悪いところを見せたくなかったのもある。 「イェイー、それでは本日のメインイベント肝試しのはじまりー」 と弥は言った。 いつも、おちゃらけた雰囲気を持つ。 また、彼はこういうイベント的なものになると普段と全く人が変わったようにハイテンションになる。 「どんな順番で中に入る?」 と直人が言った。 頭脳明晰とまではいかないがクラスではそこそこ上位の成績をキープしていて、頭はよく切れる。 それでいて、彼は常に冷静だ。 「こういうのって少し怖いしみんなで行こぅ…」 と少し語尾を小さくしながら羽柴真希(ハシバ マキ)は言った。 それを聞いて、青葉涼風(アオバ スズカ)と犀川結衣(サイカワ ユイ)も同感なのかすぐに首を縦に2回コクコクと同時に振った。 僕はほとんど彼女たちのことを知らない。 今日も、ただの人数合わせとして来たつもりだ。 「じゃあー、行こっかぁー」 少しの間が空いた後、直人はしっかり手にビデオを持って待ちかまえて言った。 弥が先頭を行き「お邪魔します」と陽気に言いながらドアを開けて入っていった。 その後を各々、懐中電灯を持ちながら涼風、結衣、真希、僕と続き、そして最後に直人が入ってドアを閉めた。
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