無駄

3/9
31人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
『変なの』 「え、なんなんさっきから自分、喧嘩売ってるン?」 新しい髪形を けなされた井上は 相当ご立腹のようす。 ほらまた。 そんなに怒ったって 無駄なのに。 『せやないけど、でも、本間お前、無駄多いって』 「だからなんでやねん」 『恋とか友情とかに時間費やしすぎやねん。そんなんやってる暇あったらお前もネタ考えろ』 ちょっとだけ、 声のトーンが落ちた。 結局は俺、 ストレス溜まってたから、 こんなコト言うてるだけか。 同情とかされたら どうしようとか、 変な心配が浮かぶ。 「それは、初めに決めたやん。お前がネタは作るって。大体、恋愛に時間費やして何が悪いねん。」 あ、そういえばこいつは こういうやつやっけ。 同情は、するのも されるのも嫌いなのを 思い出した。 そのおかげで、 俺の変な心配は すぐに消えた。 でもそれはつかの間で、 なぜか井上は まだ何かを言おうと 口を動かし始めた。 「それに、」 言いかけて俯く。 さっきまでの勢いが消えて、 いきなり声が小さくなる。 なぜかさっきとは、 全然違う、 少しだけ重い空気になる。 「それに、」 『それに,何?』
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!