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しばらくコールを鳴らすと、優しそうな男性が電話に出た。 名前や住所を細かく聞かれると予想していたが、男性は「早速今晩八時に店に来てください。履歴書はいりません、普段着でいいですから!」と明るい調子で言い、電話は切れた。 「感じのいい人だな」 今日一日バイトするだけで、何万円ものお金がもらえる!そうしたら、何を買おう・・。 私の胸の中は期待でいっぱいで、その日の講義はいつも以上にうわの空だった。 19:45―ネオンが眩しい繁華街の中にその店はあった。 街を行き交うのはいかにも高そうな着物姿の美女、華やかなドレスを身にまとった女性、髪はきれいにセットされ皆高級バックをさげていた。 私は早くも後悔した。 「場違い」 このままひき返してしまおうと思ったその時、 「面接の方ですか?どうぞ」 黒いスーツの男性は愛想良く言った。さりげなく店内へエスコートしてくれる。 薄暗い店内はまだ開店前だった。私は店奥のスタッフ控え室に通され、名前、バイト経験などいくつかの質問をされ、業務内容の説明をうけた。 どうやらさっきの男性はこの店の店長さんのようだ。 「君の名前は『涼』ちゃんにしよう!とってもさわやかでかわいい顔をしてるから」 世間知らずな私でもさすがにお世辞だと分かったが、きっと何百人もの女の子を見てきたであろう店長にそう言われ、悪い気はしなかった―
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