願い事

9/11
前へ
/17ページ
次へ
下を向いて動かない希良の肩に真はそっと手を添えた。 「希良、1度俺ん家に来い。隼人もな」 隼人の頭に手を添える。希良は小さく頷いた。隼人は少し戸惑ったが真の手を握った。 「あ…あたし…1回家戻るね、なんか心配になってきちゃって…」 「僕も…帰るね、雅ちゃん送ってくから…希良ちゃん、安心してね。」 返答はなかったが、真が頷いたため雅と泰彦は学校を後にした。 「希良…行くぞ」 真は希良の腕を掴み学校の外へ歩き始めた。 …お姉ちゃんが怒鳴るの3年ぶりだな… 隼人は上目使いでチラチラと希良を見ていた。 …あれはお母さん達が死んで1週間くらい…泣いてたボクにお姉ちゃんは… [いつまで泣いてんのよ!!泣いたってお母さん達は帰ってこないんだよ!!いい加減にしてよ!!あたしだって!] …お母さん達が死んだ後、お姉ちゃんはボクの前では泣かなかった。…いつも目は真っ赤だったけど… …でも悲しくて寂しくてボクは泣いてたんだ…ずっと…ずっと… …でもボク気づいたんだ、ボクにはお姉ちゃんがいるんだって… …でもお母さん達がいたらもっと良いって思ったから… 隼人も下を向いてしまった。 真は小さく溜め息をついた。そして、希良に目配せをした。 「あっ…」 …あたし隼人に酷い事を言っちゃった…。 希良は真の顔を見たが 『自分でどうにかしろ』 と真の目は告げていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加