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「だ…大丈夫だよ…お姉ちゃんと一緒だから…」
隼人は握っていた手を強く握りしめ、それを感じた希良は父の顔を見ず、行ってきますと短く言うと急いで玄関のドアを閉めた。
2人は無言のまま希良の学校へ向かっていた。
先に口火を発したのは隼人だった。
「実はねお姉ちゃん…昨日ね…ボク…お墓参りの時、お願い事したの…」
希良は無言のまま少し隼人の方に顔を向けた。
隼人は地面に視線を落としたまま続けた。
「でね…ボク……お母さんとお父さんに会いたいですって……」
ふいに静寂になる。
隼人がお願い事したからお父さんとお母さんは現れたって事?そんな事あるわけないじゃない!
でもならどうして…
頭の中で希良は色々考えを交錯させていた。
無言のままの希良を隼人は見つめた。
「あれは…ホントにお父さんとお母さん…なの?」
その目は真実を求めていた。
「父さんと母さんは死んだのよ…」
希良に言えるのはその一言だけだった。
隼人はまた下を向いてしまった。
でも希良に言えるのはその一言だけ…そして、その現実を頭の隅で隼人も解っていた。
気づいた時には希良の高校の門まで足は進んでいた。
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