08.たった1つだけの約束を

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08.たった1つだけの約束を

ある町に 1人の少女がいました。 その少女は いつも独りで 家に閉じこもっていました。 少女は毎日 毎日 声を押し殺して泣きました。 誰も居ないその家で 涙が出なくなるまで 泣きました。 いつしか涙は枯れ果て 生きる気力を 無くしたときでした。 1人の旅人が その家を訪れました。 しばらく泊めて欲しいと そう言いました。 旅人の訪問によって 少女は どんどん元気になりました。 しかし いつか別れがやってくるのも また、事実でした。 そしてついに別れの日。 少女は 自分も連れて行って と、そう言いました。 しかし旅人はそれを 受け止めはしませんでした。 少女は 必死に必死に頼み続けました。 けれども 旅人の答えは変わりません。 何度も何度も頼み続ける少女に 旅人は一言だけ 小さな声で言いました。 それを しっかりと聞き取った少女は 大きく頷くと 家へ入っていきました。 それを見届けた旅人は 安心したように旅立ちました。 「(もう少し大きくなったら 迎えに来るよ)」
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