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―――なんか…ちょー暇。
テレビも良いのやってねーの。
暇だしタバコでも吸いながら散歩でもしようかな。――
この選択がそもそもの間違いだった。
周の運命は、この日から狂いだす。
ふぅー。とため息混じりの煙を吐き出し、空を見上げながら行く宛てもなく周は歩き続けていた。
「ったく。独りで散歩かよ。引っ越してきたばっかだし…………って、この独り言もなんとかしないとな。一人暮らしの悲しい性だな。おっと。今日は満月か。真ん丸だなぁ。」
しんとした暗闇のなかを周は歩き続けていた。
――パシャンッ
―――!?何の音だ?
周は独りビクつきながらも耳をひそめていた。
水の跳ねる音。どこかの庭の水槽で魚が跳ねたのだろうか…。
「…空耳…?」
タバコの煙を肺一杯に吸い込み、息とともに吐き出した周は再び歩きだした。
少し歩いたところで周はある異変に気付いた。
「…ここ…。」
「ここはどこだーーーっっ。」
住宅街を歩いていたはずの周は、空ばかり見ていたためか砂利道を抜けいつの間にか草原にでていた。
そもそもつい先日越してきたばかりで頼れる人もいなければ知り合いさえ皆無。
「どうしろっつぅんだょ💧」
――?今、何か聞こえた。
そんなばかな。と思いながらも周は耳を棲ました。
――どこかで、誰かが喋ってる…?
『――暗い月夜に天(そら)をみて。燈のない街の空。赤い月が笑ってる。この悲しみに満ちた声。どれだけ叫べば届くだろう。』
――歌…?どこから…?
周が声を便りに草を掻き分けていく。
ガサガサ―――
草原を抜けたそこには――
一面に広がる湖に――――紅い月の影が浮かんでいた。
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