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金曜日の夜。
次の日が休みだと考えると早寝する気にもなれない。
そしてまた周は暇を持て余していた。
「ぁ~ぁ。連れは皆バイトに集会。退屈だっ!また散歩でもするか…。」
先日の記憶は頭の引き出しの中にあるようだ。
しかも鍵付きの。
ふぅー。と肺のなかの煙を吐き出し、次こそは迷わないようにと歩いている道順を追っていた。
しかしそれも虚しく、いつのまにか空を見上げ「今日は満月か。」とつぶやいていた。
道順などすでにわからなくなっていた。
砂利道をぬけ。
草原に入る。
そして自己嫌悪。
「…学習能力の無い俺。」
はぁ💨とため息混じりにつぶやいた。
途端に
『その先にたとえ光が無かったとしても、歩いていくの?何のために?今は滅びた星の光なのに、夢を見て歩き続けるの。独りでは輝けないただの星。翼がほしい。たとえ輝けなくても。連れていって。どこかへ。何を引き替えにしてもいい。』
聞き覚えのある声。
草むら・湖……
一気に身体が凍り付いた。
――――あの時、何を見た?
端や円に抱いていた感覚の謎が解けた。
―――あの時俺は、あの二人のどちらかをここで見た。
湖に浮かんでいた。
あの時と同じように、歌声が聞こえた。
草原を分け湖があらわれた。
歌声は闇に消え
湖に浮かぶ女性の眼は
しっかりと
周を見据えていた。
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