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その瞬間に俺は何が起こったのか分かった気がした。
その先輩のそばに寄って、「なんなんですかさっきの」と囁く。
俺のオカルトの師匠だ。この人だけが反応したということは、そういうことなのだろう。
「聞こえたのか」と言うので頷くと「無視無視」と言ってゴロンと寝転がった。
気になる。
あんな大きな声なのに、ある人には聞こえてある人には聞こえないなんて、普通ではない。
俺は立ち上がり、精神を研ぎ澄まして悲鳴の聞こえてきた方角を探りながら部室のドアを開けた。
師匠がなにか言うかと思ったが、寝転がったまま顔も上げなかった。
ドアから出て、汚い廊下を進む。
各サークルの当番制で掃除はしているはずなのだが、長年積み重なった塵やら芥やらゲロやら涙やらで、どうしようもなく煤けている。
夜中の1時を回ろうかという時間なのに廊下の左右に並ぶ多くの部室のドアからは光が漏れ、奇声や笑い声が聞こえる。
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