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ドアの下の隙間からは明かりも漏れておらず、中は無人のようだったが、ビクビクしながらドアに耳をくっつけてみる。 なにも聞こえない。 地続きになっている遠くの部屋で誰かが飛び跳ねているような振動をかすかに感じるだけだった。 頭をドアから離すと、無駄と知りつつノブを握った。 カチャっと音がして、わずかにドアが動いた。 驚いて思わず飛びずさる。 開く。 カギが掛かっていない。 このドアは開く。 後ずさる俺に合わせて女性も壁際まで下がっている。 心音が落ち着くまで待ってから「どうします」と小声で言うと、彼女は首を横に振った。 おびえているのだろうか。 しかし去ろうともしない。
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