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俺はなにか義務感のようなものに駆られて、ふたたびドアへ近づく。
ノブに手をかけて、深呼吸をする。
あの悲鳴を聞いたときの、心臓が冷えるような感覚が蘇って、生唾を飲んだ。
このドアの向こうに、悲鳴の主か、あるいは関係する何かがある。そう思うだけで足が竦みそうになる。
「開けますよ」
と彼女に確認するように言った。でもそれはきっと自分自身に向けた言葉なのだろう。
目をつぶってノブを引いた。
いや、つぶったつもりだった。しかしなぜか俺は目を開けたままドアを開け放っていた。
吸い込まれそうな闇があり、その瞬間彼女が俺の背後で「キャーッ!!」という絶叫を上げたのだった。
寿命が確実に縮むような衝撃を受けて、俺はそれでもドアノブを離さなかった。
室内は暗く、何も見えない。
暗さに慣れたはずの目にも見えないのに。
一体彼女は何に叫んだのか。
じっと闇を見つめた。
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