家鳴り

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だけどね、と師匠は続けた。その一瞬の間に、誰かが天井を叩くような音が挟まる。 「だけどね、この絵ももちろんそうだけど、たとえばこの部屋を取り囲むモノたちはすべてその洋画家の収集物なんだ。彼は画家であり、また狂ったオカルティストでもあった。彼のコレクションはついに家族には理解されず、家に付随する形で二束三文で売られてしまった。その柱時計もその一つだ。なにか戦争にまつわる奇怪な逸話があるそうだが、詳しくは分からない」 師匠の声を追いかけるように家鳴りは次第に大きくなっていくようだ。 「僕自身の収集品は、鍵の掛かる地下室に置いてある。彼が『地下室にいる』 と書き残したその地下室に。僕もその言葉が好きだ。なんだか撫でられるような気持ちの悪さがないか?『地下室にいる』という、ここに省略された主語が『わたしは』でなかったとしたらどうだろう」 バキン・・・・・・と、床のあたりから音が聞こえた。いや、おそらく俺がそちらに意識を集中したからそう思われただけなのかも知れない。
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