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「どこで使われて、何人の人が使って、私のところまで戻って来たんだろうなあ」
感慨深げに京介さんは10円玉を照明にかざす。僕は、なぜか救われたような気持ちになった。
喫茶店を出るとき、「奢ってやる」という京介さんに恐縮しつつもお言葉に甘えようと構えていると、目を疑う光景を見た。
レジでその10円玉を使おうとしていたのだ。
「ちょっとちょっと」と止めようとする僕を制して「いいから」と京介さんは会計を済ませてしまった。
ありがとうございましたとお辞儀した店員には、どっちが払うかで揉める客のように見えたかもしれない。
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