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歩きながら僕は「どうしてですか」と問いかけた。だって、そんな奇跡的な出来事の証しなのだから、当然自分自身にとって10円どころの価値ではない宝物になるはずだ。
しかし京介さんは「また還って来たら、面白いじゃないか」とあっさりと言い放った。
聞くと、その10円玉が手元に戻って来た時から決めていたのだと言う。ただ10円玉を支払いに使う機会が今まで偶々なかっただけなのだと。
歩幅が、僕よりも広い。
少し早足で追いかける。
その歩き方に、迷いない生き方をして来た人だという、憧れとも尊敬ともつかない感情が沸き起こったのを覚えている。
追いついて横に並んだ僕に、京介さんは思いついたように言った。
「奢る必要があっただろうか」
そんなことを今さら言われても困る。
「私の方が年上だけど、私は女でそっちは男だ」
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