図書館

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そうか。 書庫は図書館自体が閉まるより早く施錠されるから…… 随分待つ羽目になったが、人名尻取りを少しやったあとウトウトしはじめ、あっさりと二人とも眠ってしまった。 目が覚めてからよくこんな窮屈な格好で寝られたものだと思う。 凝った関節周辺を揉みほぐしながら隣の師匠を揺り動かすと、「どこ? ここ」 と寝ぼけたことを言うので唖然としかけたが、「冗談だ」とすぐに軽口だか弁解だかをして外の様子を伺う。 暗い。 そして書庫の本棚が黒い壁のように視界を遮る。 先へ行く師匠を追いかけて手探りで進む。 息と、足音を殺して本の森の奥へと。 「あ」 師匠にぶつかって、立ち止まる。 闇の中でのジェスチャーに従い、その場に座り込む。 「その、エアポケットみたいな場所って」 ヒソヒソ声が言う。 「人間には居心地の悪い空間でも、霊魂にとってはそうじゃない。むしろ霊魂がそこを通るから人間には避けたくなるんだろう」
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