3138人が本棚に入れています
本棚に追加
掘ったら、とんでもないものが出てくるよ。たぶん。
そう言って、コツ、コツと床を指で叩く。
「だからそこに吸い込まれるように、昔からこの図書館には霊が通るそういう穴がたくさんある」
沈黙があった。
師匠が叩いた床をなぞる。長い時間の果てに降り積もった埃が指先にこびりついた。
ふいに足音を聞いた気がした。
耳を澄ますと、遠いような近いような場所から、確かに誰かが足を引きずる様な音が聞こえてくる。
腰を浮かしかけると、師匠の手がそれを遮る。
その音は背後から聞こえたかと思うと、右回りに正面方向から聞こえ始める。
本棚の向こうを覗き込む気にはなれない。
歩く気配は続く。
それも、明らかに二人のいるこの場所を探している。それがわかる。
この真夜中の書庫という空間に、人間は俺たち二人しかいない。それもわかる。
最初のコメントを投稿しよう!