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左肩のほうから右肩の方へ、微かに古い紙の匂いが漂う気流が通り抜けているだけだ。
視界は狭く、先は暗幕が掛かったように見通せない。
「僕が書庫の穴を塞いだころから、流れが変わったのか外の穴まで虫食いみたいに乱れはじめた」
こんなことができるんだよ、たかが本で。
師匠は嬉しそうに言う。
今の話には動機にあたる部分がなかった。けれど、何故こんなことをするんですかという問いを発しようにも、「こんなことができるんだよ、たかが本で」というその言葉しか、答えがないような気がした。
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