葬式

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住宅が立ち並ぶ道の向こうに鯨幕の白と黒の模様が見えた。 そしていくつもの影が移ろうような頼りなさで、途上にある。 なんだか気持ちが悪い。猫の礫死体を見たときのような。 「そういえば斎場がありましたね」 「うん……」 カラ返事が返ってきた。 この世のものではないものをごく日常的に見ている人にとって、この光景はあまり興味を惹かれないものなのだろうか。 「あれが見えるようになったのか」 去年の今頃は気がつかなかったのにな…… そんな、軽い侮蔑の調子に自分のことを言われているのだとわかった。
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