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半ば畏れ、半ば馬鹿にして師匠と呼ぶその人は、俺に見えていないものをあえて教えないスタンスだった。
嫌な性格だ。
「なんなんですか」
「あれは、まあ、幽霊の類だけど。光に群がる虫と言ったらしっくりくるかな」
虫とはあんまりだ。
そう思った瞬間遠くの影がひとつ、表裏のないままこちらを向いたような気がした。
「葬式は死と密接につながっている、というイメージが日本人のメンタリティに存在する限り、毎年毎年生産され続ける死者にとってもやっぱり特別に気になる場なんだろう」
でもまあ虫だよ。
師匠は鯨幕の見える方へ歩き始めた。
俺も続いて狭い道へ入る。
少し歩きにくい。
気がする。
うっすらとした影が踏んでいった場所が、ねとつくような。
喪服を着た人たちが大勢出入りしている建物についた。
遠巻きに立ち止まる。
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