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「大尉!
ハインツ大尉!
一機撃墜!
一機撃墜しました!
攻撃を続行します!!」
ハインツ大尉に戦況報告をしながら、俺は照準内にP47を捉えた
「もらった…!」
そのまま発射トリガーを引くと、凄まじい勢いで機関砲弾の発射が始まった。
身体を揺さぶる振動と、体内に響き渡る機関砲の叫び。
俺が生み出した弾丸の筋は、P47のコックピットを打ち砕いた。
キラキラと光を放つキャノピーのガラスと、中から飛び散るパイロットの肉片や血液。
確かな手応えを掴み、高度を徐々に下げ始めたP47を見下ろしながら、俺は機体を上昇させながら静かに笑みを浮かべた。
しかし…!
上昇し始めた機体に、突如として沢山の異音と衝撃が走った。
グラつく機体を立て直しながら、それでも優位を保つために俺は機体を上昇させ続ける。
残油計の針が下がり始めたのに気付き、俺は慌てて主翼と胴体部分を確認した
「喰らっちまったか…!
くそ!」
その刹那、右主翼から火が上がり、機体が勝手にロールし始めた。
ロールを収めようとして、逆側にバンクをきろうとした時だった。
真上から飛来したP47から放たれた機関砲が、俺の左肩と主翼に穴を開けていったのだ。
血しぶき舞い散るコックピット内で、俺は声にならない声を上げながら、なんとか機体の水平を保とうとした。
しかしP47は、そのまま宙返りをしながら、俺の真後ろにピタリと密着したのだ
「俺……
墜ちる…な……」
穴の開いたキャノピーから、風を切りさく音と機関砲の発砲音が聞こえた時、俺は静かに目を瞑った。
ドーバー海峡上空で散って逝った同期の戦友達。
クルスクで守ってやれなかったシュトゥーカのパイロット達。
ベルギー上空で行われた熾烈な四発重爆迎撃戦。
その迎撃戦で空に散った若いパイロット達。
そんなパイロット達の顔が浮かんでは消え、俺も逝くのかと安息にも似た確信がよぎった時だった。
機関砲弾の着弾を伝える独特の振動が襲いかかって来たのだ
『ラッセン!
生きてるな!
ラッセン!!』
それと同時にハインツ大尉の声が聞こえ、機関砲弾の着弾が一時的に止んだ。
変わりに聞こえて来たのは、鉄が軋む音と爆発音だった
『脱出しろ!
聞こえてるか!?』
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