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火と煙を吐き出すボロボロの機体の中で、俺は静かに笑っていた。
揺るぎない死の確信。
それを感じた時、俺は自分を嘲笑ってしまったのだ。
敵機撃墜を何よりの誇りとし、人殺しを生きがいとしている自分に、唐突に訪れる戦死という事実。
それは因果応報なのだろう……。
俺は寄り添うハインツ大尉機を見つめながら、口の血を拭ってなんとか言葉を発する事が出来た
「大尉…
今まで有難う御座いました…
俺はリュフトヴァッフェやヒトラーなんかの為じゃなく……
あなたの為に戦って来ました……」
すぐさま大尉から言葉が返って来た
『話は地上で聞こうじゃないか…
とにかく脱出しろ』
そんな大尉の言葉を聞き、俺は左肩に手を当てながら答えた
「…もう脱出は出来ないかもしれません……
高度も既に3000を切りましたから…」
俺はインカムを遠ざけながら、計器の裏に貼り付けておいた写真を取り出した
「…すまん…アメリア……
俺の…俺の死に場所は…
やはりコイツの中らしい……」
機首が徐々に下がり始め、最早機体を立て直す事すら出来ない俺は、徐々に迫り来る大地を写真と共に眺めていた
『ラッセン!
聞こえているかラッセン!?』
遠巻きにハインツ大尉の叫び声が聞こえたが、俺は動かない左肩の激痛に耐えるしかなかった……
『脱出しろ!
早く脱出するんだ!』
眼前に広がるルールの大地。
最早、草や木が一本一本視認出来うる高度だった
「…愛機と散る…か……
本望だ……」
プロペラが土砂を巻き上げた刹那、エンジンと共に俺は四散した。
大空の戦いの中に散った戦闘機乗り。
俺もその一人になったのだ…………。
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