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「それじゃ、事件の概要を確認しよう。
一年前、夜星夫妻の経営するカフェ〈ALICE GARDEN〉が何者かによって放火された。
被害者は夫の太陽(ヒロハル)さんと妻の羽月(ハヅキ)さんの2名。
この時、一人娘の月は幸いにも一命を取り留めた。
その後、彼女は親戚の紅江家に引き取られた。
紅江家には太陽さんの兄の晃(アキラ)さんと妻の霞美(カスミ)さん、そして娘の光琉(ミチル)さんの三人が暮らしていた。
夜星月と紅江光琉は同い年だったが仲が悪かった。
同様に紅江夫妻も月が来る前から、仲が拗れていた。
ただ、夫の晃だけは月に対して冷たい態度をとらなかった。
その晃氏が一昨日、何者かによって刺殺された。
ここまでは合ってるね?」
「うん…けど、私が助かったのは、両親のおかげ…
あの時、逃げ遅れそうになってた私を、助け出してくれたから…」
『月!もう大丈夫だ!』
『お父さん…お母さん…』
『月は先に行ってなさい。お母さん達もすぐ行くから…』
『うん!危ないから早くね!』
「…私、気付けなかった…二人とも、最後に必死で嘘ついてさ…
…二人の身体にね、傷があったって…お父さんは足、お母さんは背中に…
遺体は階段の下ら辺…私と別れた場所で、重なるように倒れた状態で発見されたって…
分かる!?これは〈奇跡の生還〉なんて素敵な話なんかじゃない!!
二人の犠牲者を伴って生き延びた〈親不孝な娘の話〉そのものよ!
私を助けに戻らなければ、二人とも死なずに済んだ…私が殺したも同然だ!!」
「月っ!!」
「君、本気で言ってるの?」
「だってそうでしょ!?
私のせいでお父さんとお母さんは…!」
「それ以上、自分を責めて何になる?
少なくともご両親は君にそんな思いをさせるために助けた訳じゃ…」
「分かってる!!…頭では分かってる…けど、もし二人が引き返さずにそのまま逃げていれば、助かってたかもしれない…
過去の僅かな可能性に縋ったって良いでしょ!?
こうでもしないとやっていけないんだから…!
…私だって〈命を懸けて助けてくれた両親を傷付けるような考え〉持ちたくない…
でも二人には何の罪もなかった!なのに殺された!
私はそれを探るためにここに来た。私達、家族の無実を証明するために…
そう…今度は私が二人を守る番だから!」
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