16人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は驚く。
だが男はそのまま片手で少女の手をとり、爪で少女の甲に×の字を描いた。
「いっ……ッ」
じんわりと血が×の通りに滲み、ぽたぽたと床に落ちる。
そのまま呆然としていたが、はっと気付いて手を引こうとした。
が、無駄に終わる。
触れているだけのような男の手は強く、引いてもびくともしない。
「は、離してよっ!」
思わず狼狽えたように叫んでしまいったが、それを気にする相手ではなく。
じっと少女を見つめたと思ったら朗々と語り始めた。
「汝、契約の言葉を使い我を召喚した。我、汝に応えるなり。我、汝の血をもって汝に仕える。契約をここに記し、汝を主とし離れぬことを誓う」
そして言い終わったあと、ペロリと血を舐めた。
その瞬間、少女は身体中の血液が沸騰するような感覚がした。
ぞくぞくと快感のような波が全身を巡り、だが男の舌が離れれば何事もなかったかのように元に戻る。
「許す、と」
「え?」
「許す、と言って下さい」
少女は少し迷ったあと、許す、と言った。
「契約は行われた。我が名はジディネア。主が結木華津にその命尽きるまで仕えよう」
最初のコメントを投稿しよう!