召喚

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少女は驚く。 だが男はそのまま片手で少女の手をとり、爪で少女の甲に×の字を描いた。 「いっ……ッ」 じんわりと血が×の通りに滲み、ぽたぽたと床に落ちる。 そのまま呆然としていたが、はっと気付いて手を引こうとした。 が、無駄に終わる。 触れているだけのような男の手は強く、引いてもびくともしない。 「は、離してよっ!」 思わず狼狽えたように叫んでしまいったが、それを気にする相手ではなく。 じっと少女を見つめたと思ったら朗々と語り始めた。 「汝、契約の言葉を使い我を召喚した。我、汝に応えるなり。我、汝の血をもって汝に仕える。契約をここに記し、汝を主とし離れぬことを誓う」 そして言い終わったあと、ペロリと血を舐めた。 その瞬間、少女は身体中の血液が沸騰するような感覚がした。 ぞくぞくと快感のような波が全身を巡り、だが男の舌が離れれば何事もなかったかのように元に戻る。 「許す、と」 「え?」 「許す、と言って下さい」 少女は少し迷ったあと、許す、と言った。 「契約は行われた。我が名はジディネア。主が結木華津にその命尽きるまで仕えよう」
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