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ことことと鍋を煮込む音がする中、少女はソファーに丸くなって座っていた。
視線の先は、悪魔。
(非現実的すぎだわ…)
彼は上着を脱いでエプロンをしていた。
芸能人さながらの風体に、家庭的な雰囲気はまるで合わない。
何を作っているかは知らないが、悪魔なんだから魔法みたいに一瞬で料理を出すとかは出来ないのだろうか。
「…あのさぁ…悪魔って、何?」
少女は男の背中に問いかけた。
彼は長めの髪を揺らして振り向く。
「分かりません」
ふわり、と笑った。
はぁ?と聞き返すと続きを言う。
「我々は魔女に仕え、代価にその血を貰う。それだけの存在です」
「血…貰ってどうすんの?」
「なくても生きていけますが、我々は血を欲し…あなた方の金のようなものでしょうか。あれば、生活が豊かになる」
「…よく分かんない」
魔女とか悪魔とか血とか、おとぎ話みたいなことばっかりだ。
だが、少女は信じた。
悪魔の存在は異種なるもの…床に影がないことを見て、信じる他なくなった。
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