鍵穴

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「こ…殺さないで下さいよ…?」 兵士の挙動不審な言動。 あまりに変な奴だから…思わず溜め息をする。 「無駄な殺しはしないよ。」 正直、任務から帰って来たばかりで体力も回復していない。 もちろん傷も…。 だから、極力、無駄な体力は使いたくない。 ここで兵士一人殺しても、無意味だ。 「よかった…。」 安堵する兵士。 やっぱり変な奴だ。 「それにしても"鍵穴"って名前のクセに、穴なんてどこにもないですよね~。」 「…。」 「僕、案外物知りなんですよ? 鍵穴って言うのは、ある意味では間違っていないんです。」 「…?」 兵士が僕でさえ知らないことを知っている様な口振りで話すものだから… 思わず、聞き耳を立ててしまう。 「この扉のデザインは、世界を表しています。 天使の片翼は天界、悪魔の片翼は魔界、ハートはその狭間にある…ここ、人間達が暮らす地上。 蔓は、三世界を決別・分離を表していると言われます。 要は、三世界が入り交じらないようにするための束縛的力が蔓だと思って下さい。 なぜ、この扉にそのような意味合いのデザインがあるかと言うと…この扉が三世界を繋げる力を秘めているからです。 いえ…正確には、"鍵"が鍵穴を開くことが出来る。 力を持つのは鍵の方ですね。 もし… その"鍵"を持った者が、鍵穴を開けてしまった場合…どうなると思います。」 急に真面目そうな表情で聞いて来る兵士。 僕は、彼の表情を… 顔を見て…固まった。 リノアスと同じ…赤い瞳。 「最悪の場合… 世界は闇に引き摺り込まれてしまうんですよ。」
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