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鍵穴の周りに立ち込める煙と、2人の人。
爆発により一部の壁には穴が大きく開き、見えることのなかった景色達が顔を見せる。
「あーいきなり酷いな。
一応、兵士なんだけど?
魔法の発動が遅れたら丸焦げじゃないか。」
身体の周りに防壁魔法(シールド)を張りながら、言い退ける兵士。
被っていた、兵士専用の帽子が脱げ、顔を露(あらわ)にする。
彼は、金髪の髪に、赤い瞳…。
嫌な程、リノアスと同じ色を持った奴だった。
違うのは、髪の長さと、中途半端に黒く染まった揉み上げぐらい。
なんだ?
こいつ…。
「殺すつもりで攻撃したんだ。
当たり前だろ?
それに…
変装するなら、口調・態度・仕草の一つ一つまで完璧にすることだな。
侵入者くん。」
まずいな…。
一瞬の判断とはいえ…
こいつは僕の攻撃を容易く退(しりぞ)けた。
…相手が悪い。
「演技仕込んでる暇がなかっただけだ。
あぁ~…
さすがヴァルキリーの一員ってな?
攻撃する前にされるとは、思ってもみなかったよ。」
そう…
攻撃を先に仕掛けたのは、僕だ。
互いに鍵穴の前で会った時から、タイミングを伺っていた。
いつ攻撃を仕掛けるか。
茶番をしていた2人が、攻撃を仕掛けたのは、ほぼ同時…だったが、速さはフィリアの方が上だった。
それに早くも気付き、侵入者は攻撃から一転、防御へと切り換えた。
その速さは、稀に見ぬ速さで…
力の強さを物語っている。
「……。
そんなこと…どうでもいい。」
そう…どうでもいい事だ。
「侵入者。
大総統リノアスの命(めい)により、ここで貴様を…。」
今、重要なのは…。
「処刑する。」
それだけだ。
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