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侵入者は、不適な笑顔を浮かべる。
余裕にさえ見える彼に、容赦なく、幾つかの球状の魔法を投げ付ける、フィリア。
魔法は侵入者を追い掛ける様に、進路を変え、動き続ける。
「ちょ…っ!
遠隔操作有りなの!!?」
侵入者は、余裕の表情から一変、必死で逃げ回る。
僕は、そんな彼を誘導し、魔法で囲み尽くす。
「やべっ!
囲まれ…。」
「後ろもヤバそうだな。」
気付けば、背後には水色の彼。
周りには、爆発しそうな魔法玉。
処刑する気満々の彼は、いつでも殺せるように、俺の頭に手を添える。
下手に抵抗したら、有無を言わさず、頭は吹き飛ばすだろう。
侵入者は、諦めた様に両手を上げると、溜め息を吐(つ)いた。
「あ~…
殺される前に、一言良い??」
「…何だ。」
「何で最初から変装して、静かに侵入せずに、ワザワザ目立つ様、本部に攻撃して侵入したかわかる?」
「!?」
侵入者は、素早く頭に添えられた手を取ると、自分の方に寄せる様にして、フィリアを引張った。
「それは…
君を誘い出すためだよ。
蒼籠鳥(そうろうちょう)。」
僕は、油断を突かれたことよりも先に、侵入者から聞く、謎の単語に身体を硬直させた。
なんだ…?
蒼籠鳥って…?
次の瞬間、勢いよく、侵入者の膝蹴りが腸(はらわた)に入る。
「か、は!?」
治り切っていない傷口が開き、再び赤い血が流出す。
僕は、無様にも膝をつき、傷の痛みに悶えた。
そんな僕に、侵入者は見下しながら近寄る。
「貴様…っ!」
これ程までに危機感を感じたのは初めてだった。
視界は揺らぎ始め、次第に掠れていく。
そんな中、鮮明に聞こえる敵の声。
「悪いな。
強引だけど…君を連れて行く。」
もう…前は見えなかった。
でも、僕は最後の力で争(あらが)うように、言葉を吐いた。
「ふざけ…る、な…。」
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