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長い廊下のような部屋。部屋の左右の壁には似たような兵士が機械のように並び、口を揃えて言う。
「お帰りなさいませ。
フィリア様。」
彼等はそれだけを言うと、壁の一部のように立ち尽くす。
例え、少年が血塗れでも、彼等は物のように、ただ存在するだけ。
そして…僕もまた、血塗れであることを気にしてもらうつもりもなく、無視するように、部屋の奥を見据える。
兵士が作った道の奥には、100cm程の高さをした一つの機械。
機械は黒く、三角柱の天辺を斜め切りしたような形をしている。
多分、人が操作しやすいよう、工夫された形なのだろう。
断面には、レリーフのようなデザインが施されており、中央に唯一押せる、赤いボタンがある。
少年は、当たり前のように兵士達を横目に、奥へと歩き出す。
一歩、また一歩と歩く度に、腰下まで伸びた長い横髪がサラサラと揺れる。
少年の髪は、水色掛かった銀髪で、肌も白いためか、全体的な色素が薄く感じられる。
唯一、色素がしっかりした青い瞳は、身体中に付いた黒い赤により、その存在を薄くさせている。
そんな彼が歩く空間は無駄に静かだった。
唯一、響くならば…フィリアと言う少年の足音だけ。
でも、そんな足音だけの空間は長くは続かない。
僕は知っている。
機械のような兵士は、やはり人間なのだと。
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