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ここはどこだろう…。
雨が…冷たい。
雨の臭いと、鉄の臭いが嗅覚を刺す。
足下は赤い。
真っ赤。
これは人から流れ出す血。
「……………。」
ただ無言で…
僕は屍の中に立っていた。
コレは、魔導師の死骸。
リノアスの命(めい)により処刑した人々。
抵抗しなければ…
殺さずに済んだのに。
そんなことを思いながらも、灰色の空を見上げる。
冷たい…。
生暖かい…。
雨だけが、その世界での音だった。
でも、それを壊すように人の気配が背後からする。
僕は、慌てることもなく…ゆっくり後ろを振り返った。
「君は…?」
そこにいたのは、自分と同じ、水色掛かった銀髪の幼い子供。
僕は無言で、その子を見つめる。
「……。
子供を殺す程…無慈悲じゃない。
人気のある場所へ連れて行って上げるから…。」
任務内容は、魔導師の捕獲。
抵抗したら、その場で処刑。
魔導師は子供ではなれない。
だから…
この子は関係ない。
「…たの?」
子供が、小さい声で何かを言う。
僕は、耳を澄ませながら、子供に近付く。
「…?」
「また殺したの?」
不適な台詞に、僕は耳を疑う。
今…
なんて言った…?
「何回、殺せば気が付くの?」
なんのことだ?
感じたことのない寒気が背筋を通る。
「何回、失えば思い出すの?」
僕が…
何か忘れてる…?
「ねぇ…思い出してよ。
全てを。」
少女は…僕の後ろを指差した。
僕は、恐る恐る、後ろを向いた。
「!?」
そこにいたのは…
心臓を貫かれた青年。
彼は、十字架に縛られ…
肉を烏に食べられ…
腐った肉には、蛆虫(うじむし)が湧き…
所々、骨が見えている…。
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