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――中傷した者には、不幸な未来を予言するんだ。
次に提示した管理人のレスに『全知全能を否定する者に未来はないよ。アナタは残り12年と3ヶ月の命だ』と書き込まれていた。
天地はゾッとした。余命宣告という裁きが、その者にどれほどの精神的なダメージを与えたかを想像した。
「これは、酷いな」
「でしょ。神と呼ばれる存在の割には、幼稚だと思わないかい? こんな取るに足りない中傷一つ一つに、向きになるんだから」
天地は少しの間黙り込んでいた。これから自分がしようとしている事には、危険が伴うと。
恐怖と不安は決意を揺るがす。
「天地さん、やっと僕らにもレスが返ってきたようだよ」
菊は天地の顔色をうかがいながら告げた。天地は言葉に詰まった。
「妹さんの、仇を討つんでしょ」菊の囁きが、天地の心を奮い立たせた。
――ドウザワだけは許すものか……。
天地は菊からマウスを奪い、レスを読み上げ始めた。
「探し物は……、アナタが住むマンションのゴミ捨て場にあるよ。新聞紙とガムテープで固く包装されているから…………って、え?」そのまま菊を見つめた。
「おお、凄い。大正解だよこれ」
菊の笑顔が引きつっているように見えた。
「アナタって、菊、お前の事だよな。どうしてお前のマンションに俺のカップがあるんだ」
「いやいや、これを機会に僕があのコーヒーカップを落として割っちゃった事を告白出来たらいいなって思ってね。はい、ごめんなさい。それより本物だよこの管理人。きっとこいつがドウザワだ」
「……確かに、お前が認めるなら決まりだな」
それから二人は次の策をめぐらした。
「この管理人の個人情報を手に入れたい」
テーブル席に腰をおろした天地は、携帯電話を菊に手渡した。
「俺達はパソコンに詳しい人間だとは言えない。ハッキングなんて出来っこない。そこで、お前の知り合いの仁木島さんに力を貸して頂きたいんだが」
型の古い携帯電話だったが、菊にとっては立派な機械だ。
「確かに、このサイトの噂を仁木島にした時は、彼はかなりの興味を示していたけど……協力してくれるだろうか。警察官が市民に情報を流すのは歴とした犯罪だよ」
「だが、警視庁なら管理人の情報ぐらい容易く引き出せるだろう。これ以外に策があるか」
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