異質な形の林檎達

堂沢さん

　
堂沢！？ 誰だよコイツ。

「ええっと、堂沢さん‥‥ですよね？」

「ああ‥‥」

俺の知り合いに堂沢なんていないんですけど

「何？ 探し物してんだろ？」

「へ！！？」

探し物？

「アナタあれが無いと多分クビだなぁ」

「え！？ えっ？」

何言ってんのこの人？ 探し物って‥‥

「ほら、あれだろ。昨日アナタ酔っ払って帰ってきただろ？ あん時にポストにファイル入れただろ」

「あっ‥‥」

そういや昨日飲んで帰ってきたんだ。相当酔ってたからあんまし覚えてないや。だから今日寝坊したんだった。

でもなんでコイツが知っているんだ？ ってかポストって‥‥

家を出て、アパートの下のポストを覗いた。

あった‥‥。ファイルが入っていた｡

「おい‥‥あったか？ ファイル」

「え！？ あっ‥‥はい！ ありました」

「そりゃあ良かったなぁ。俺は今から麻雀行くから切るぞ、じゃあな」

プツッ‥‥プープー

‥‥堂沢って誰だ？ 昨日一緒に飲んでたのは前塚だぞ

あれかな？ 前塚のイタズラかな？

まぁファイルも見つかった事だし、早く会社に行かないとヤバいな

その日は会社で課長に正座をさせられただけで済んだ。これもファイルが見つかったおかげ‥‥。前塚のおかげだと思っていた。

　そしてこの日の夜も昨日と同じ店に行った。

「おう！ 前塚」

前塚も来ていた。

「昨日はあの後生きて帰れたのか？」

「生きて帰れたからまた今日飲みに来てんじゃねぇかよ」

「そうとう酔ってたよな」

「そういや今日はありがとうな、おかげで正座だけで済んだよ」

「は？ なんの話だよ」

「とぼけんなよ、堂沢さん」

「誰が堂沢だよバカが、まだ酔ってんじゃねぇの？」

え‥‥？

話をよく聞いてみると、昨日はこの店の前で俺は前塚と別れたらしい

じゃあ堂沢って誰だよ？

その日はあまり飲む気にはなれなかった。