堂沢さん 

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 堂沢さん 

  「やっべ!! 遅刻した!」      今日もまた仕事だ。毎日毎日‥‥同じ事の繰り返し、いつ人類が滅亡するかわからないのに、のん気にサラリーマンやってる俺ってバカみたい。     プルルル‥‥携帯が鳴った。     「はい、吉田です」     また課長から電話だよ。あの人も暇だなぁ。社員1人の遅刻に一々電話で説教とか。あっ‥‥ファイル忘れた。     「すいません! 今取り込んでるんで後でかけ直します」     プツッ‥‥ 家に戻ってファイルを探した。ファイルが無い。次の仕事に必要な資料が入ってるのに、どうしよう。     また課長に説教されるわ。いや‥‥下手したらクビかなこれ。ポケットから携帯を取り出した。     「どうしよう」     とにかく謝っとけばその場はしのげるか‥‥。課長に電話をかける     ピッ‥‥プルルル‥‥プルルル     「はい、もしもし」     課長とは違う太い声がする     「あ、あれ? 課長ですか?」     「電話番号間違ってませんか?」     あれ? この電話番号誰のだよ!     「あっ! すいません間違えました」     プツッ     俺としたことが‥‥。こんな時に間違え電話なんて。もう一度課長にかけ直した。     ピッ‥‥プルルル‥‥プルルル     「はい、もしもし」     また太い声だ。      「あれ?」     「またアナタですか」     おかしい‥‥確かに課長にかけた筈なのに、あれれ?     「すみません、またかけ間違えちゃいました」     「‥‥‥‥」     ヤバい‥‥この人怒ってるかも     「本当にすいませんでした」     「そろそろくる頃だと思ってたんだよね」     「はい!?」     なんだよこの人‥‥。なんか変な事言い始めたよ。     「アナタ吉田 雅彦だろ?」     !!?     なんでコイツ俺のフルネーム知ってんだよ。     「すいませんがどちら様ですか」     「え? 俺? 堂沢だよ」  
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