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悲鳴を上げた荻野に橋爪が視線を向ける。 腰が引けているばかりか膝まで震えている体たらくだ。 情けない事この上ないが、橋爪は荻野を責めなかった。 刑事と言っても一人の人間だ。『赤黒い』シルバーのミニバンを見れば脅えてしまうのも無理は無い。 橋爪は励ますように荻野の肩を二度叩き、歩調を合わせて鑑識の輪の中に入って行った。 「ん? おお橋爪・・・と、被害者か?」 意地悪く声をかけてきたのは佐々木寅正。階級こそ橋爪が上だが人生の全てを鑑識に捧げてきた大ベテランで、若い頃は公私共々面倒を見てくれた橋爪が署で唯一頭が上がらない人だ。 「寅さん、勘弁してやってください」 「何だ、最近過保護になってないかお前」 「そんな事はありませんよ」 その証拠を語る意味も含め上を見上げた。細かい網目状の金属で出来た天井。その隙間を埋めるように固まった血が詰まっている。 「この上に被害者が?」 「まだ見てないのか?」 「今来たばかりですから」 警官に話を聞いた事は伏せた。 「ならさっさと見てこい。と、言いたい所だが仕事増やされちゃかなわんな」
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