2747人が本棚に入れています
本棚に追加
そもそもパトランプや無線を積んでいない完全な私用車だ。いくら現場が近いからと言って万が一に備えられないこの車で行くべきでは無い。
ただ30代の若い刑事とは言え荻野は無能では無い。ならばそれなりの理由があるだろうし、現場に向かうまでに聞けば済む話だ。助手席のロックを外し荻野を乗せて車を走らせる。
「で、どんな状況なんだ?」
「パニクってます。どうやら周辺の交番から人員を集めているらしくて。大野木さん達その対応に追われてて詳しくは聞けませんでした」
「・・・何が起きたんだ」
「一番の原因はマスコミみたいですね。物見遊山の野次馬がリークしたんじゃないですか?」
怒り露に舌打ちする橋爪。しかし警察が混乱するほど人を集める事件だという証拠である。
様々な意味で気が重くなるが、まさか引き返してポチと散歩に行く訳にもいかない。
首を回して気持ちを切り替え裏道を縫うように進んでいく。
すると荻野の予想が的中した。マスコミのバンが数台と人だかりで道が埋まっていたのである。
その鬱憤を晴らすようにクラクションを鳴らしながら、針に糸を通すが如く無理矢理突っ込んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!