卒業式前日

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 一生懸命な彼女の真っ直ぐと見つめるブラウンの瞳(め)が好きだ、そんな事を心中に抱きながら、小さい胸元から大きな鼓動が鳴り止まぬのを傷を作った痛みとは別の暖かい痛みを覚えながら逃げる様に走って下校した。いつもより早く家に着くなりバタバタと部屋へ駆け上ればランドセルからノートと筆箱を取り出し椅子に腰掛けて机に向かう。俺は走り出して止まらない勢いに乗せて作文を仕上げる事に没頭した。彼女の言葉(エール)が原動力なって黙々と時間を忘れるぐらい必死になっていたのは、後々母さんの驚いた顔で気がついた。
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