卒業式前日

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「──っと、言う訳だから皆には最後に1人1人作文を読んでもらいます6年分を1週間と言う短い期間内で仕上げるのは大変かもしれませんが、先生は皆なら出来ると信じていますので頑張って下さい」  小学校卒業式一週間前。俺は6年3組のクラス委員を務めていて、この頃は卒業式に発表する“小学校生活の思い出”について会議室へと呼び出された。俺は文書きなんてスキルは生まれた時から備わっておらず、ましてや何を書こうかとか、これまでにどんな行事があっただろうかとか記憶を巡らせ葛藤の中を書き上げなきゃいけない上にそれを読まなきゃいけないとなると心配が嫌な感じに積もっていっていた。 「それじゃこれで終わります。起立、礼、有り難う御座いました」 「ありがとうございましたぁ」  先生の話を終えて椅子を押して立ち上がり、同様に俺等も立ち上がって先生の挨拶に色んな意味を込めただろう復唱をして終わりを告げた。  元々用事が無い限り入る事の無い会議室から去って教室に戻れば既に誰もおらず、辺りは夕日で真っ赤に染まり俺の影が障害物関係無しに伸びきり派手に影で遊べそうなくらいハッキリと壁に映る中、緩慢と帰りの準備を始めた。
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