始まり

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これは、田原という町を舞台にした話である。 耳をつんざくような音が青空に響いた。 約30人くらいの選手がスタートラインを蹴った。 本部からの中継が耳に入ってきた。 「さぁ、中学生陸上カーニバル矢代杯が始まりました、まず一番前へロケットスタートを決めました選手は高菜中学校の鈴木 翔選手です、そしてそのロケットスタートにピッタリと着いているのは同じく高菜中学校の今川 大貴選手です」 アナウンスが続くなか翔は少しづつスピードを落とし始めた。 それを気に大貴は翔との距離をますます詰めた。 そんな二人に黄色い声援を送る女の子がいた。 「翔!しっかり走りなさい!大貴が着いてるよっ!」と翔を応援するのは、高菜中学校吹奏楽部のフルート演奏者の川峰 千冬である。 そして控え目に声をだすのは翔たちと同じ陸上部の久下 夕紀である。 「翔!ほら、頑張って!」千冬が叫んだ。 「大貴君…がんばれ」夕紀はそういって祈るように手を合わせ目をつぶった。 翔と大貴は前から吹き付ける風に抵抗しながら前に進みつづけた。そうしているうちにあっという間に最後の一周になった。 「さぁ、注目の二人の選手のラストスパートです、両選手一歩もゆずりません!」アナウンスが流れた。 「はぁ、はぁ、はぁ…」【大分体力も無くなって来た、やばいな…】翔は直ぐ後ろの大貴の規則的に吐き出す息の音とタータンを蹴る靴の音で大貴がどれだけ近くにいるのか改めてしらしめられた気分になった。 【ゴールまで後百数メートル…体力は持つか…】不安に駆られ翔は一瞬の隙をつかれ大貴が抜いてくことを許してしまった。 【やばい!ここで抜かれたら抜けない!】 翔は心の中で絶望に似たものを感じ、諦めかけた…しかし…
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