第二章

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 アニメオタクの女子高校生の友だちが、おしゃべり好きな幽霊。  世の中には妙な話もあるものである。事実はアニメよりも奇なりだかわからないが先人はよく言ったものだと思う。先人は偉い。  先人と言えば、ある意味でふわ子も先人であるのだけども、私たちは自然と打ち解けあった。  当初は生意気なヤツだと思ったのだが話してみると案外いいヤツなのだ、これが。  出だしがアニメのことだったのも幸いしているのかもしれないが、私たちは色んなことをしゃべった。毎日、毎日、とめどないことをしゃべり合った。  ふわ子は魔法少女アンが好きでアニメの話題と言えばそればかりだったが、時折り、私の知らない話もしてくれた。  ふわ子は物知りだった。死ぬ前は大学生であった彼女は、キャンパスライフのことや自炊生活をしていたことなどを話した。  私の知らない世界のストーリーは聞いていてとてもわくわくした。アニメ以外のことで、こんな気持ちになったのは久しぶりだった。小学生以来じゃないだろうか。 「ふわ子ったら、掃除や洗濯とか一通りできるんだから。あんた、あたしのこと、ただの馬鹿だと思ってたでしょ?」 「バカじゃないの?」  素直な気持ちを語ると、ふわ子は「バカはあんたよ」と私を小突いた――いや、正確には小突く振りをした。  そう、彼女は私にふれることができないのだ。それだけではない。  彼女は物理的な行動を取れない。たとえば、私の部屋にある椅子に座ることはできないし、部屋の扉を開けることもできない。  椅子に座ろうとすれば床に埋没し、扉を開けようとすればわざわざ開けるまでもなく廊下に出てしまう。どうやら彼女はすべてをすり抜けてしまうらしかった。  だから料理や洗濯などを一通りこなせると聞いても、いまひとつしっくり来なかった。
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