第三章

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 漫画同好会に入ろう、と思った。そこにはきっと自分と同じ趣味を持った人たちがいて、大好きな漫画やアニメの話をして笑いあったり、ときにはそれぞれの絵を厳しく批評し合ったりしているだろう。今の私に最適な場所だと思う。  今までの自分との決別のためにも、私はこの放課後に同好会室へ行かなければならなかった。 「どこ行くの、バカガワさん?」  私を食い止めたのは、例によって例のごとく、ジャイちゃんにスネ子だった。  飽きもせず、ようここまで私をいじめられるものだと感心すらする。先生の説教も敬意の対象だけど、こっちもすごい。  二人はいつものように私をトイレへと連れて行く。狭く、暗いトイレ。  ここなら他の誰にも邪魔をされないだろう、いじめに最適なスポット。 「さあ、話してご覧? 掃除当番ほったらかして何処に行こうとしてたのかしら?」 「今日は、あなたたちの掃除の日でしょ。私が何で掃除しないといけないの?」  ジャイちゃんは一瞬、何を言われているのかわからないといった顔をした。私はその脇をすり抜けてさっさとトイレを出ようとした。 「待ちなさいよ」  そう言って私の制服をつかむジャイちゃんの手を、ポケットに入っていたペンで刺した。ジャイちゃんは予想外の反撃に慌てふためいた。 「ペンは剣よりも強し、ね。きゃははは、邪魔するからこうなるのよ!」  きゃははは、と哂う私を、理解できないといった表情でジャイちゃんが見つめる。その後ろには相変わらずスネ子が隠れている。  私は制服のスカートのポケットから、コンパスを取り出してみせた。 「もっと、刺しちゃうんだから、きゃは、きゃはははは!」  ふわ子はよく笑っていた。きゃははは、きゃははは、と。会った当初、私はふわ子の笑い方を気持ち悪いと思った。  コンパスを掲げたまま笑う私をジャイちゃんとスネ子は不気味そうに見つめた。 「な、なによ、こいつ」  コンパスは凶器であり、狂気であった。  私は、きゃははは、と笑い続けた。二人が気味悪がって去った後もひとり哂い続けた。
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