第四章

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 いつものように階段を上がろうとして、父さんとお母さんの部屋の扉が目についた。  私はそっと部屋に入ってみた。二人の寝具や家具が置かれている横に、仏壇がちょこんと置かれていた。位牌には行年二十ニ歳と書かれていた。戒名は小難しくて読めなかったけど、横にあった絵に書かれた文字は何とかぎりぎり読むことができた。 「……じゅういち、がつ、にじゅうはち、にち。たんじょーび、おめれとう。なかがわ、なつこ、より。なかがわふわこ、へ。……ふわこ? ああ、ふゆこ、か……汚ない字」  ついでに絵も汚かった。  でもたぶん、それは魔法少女アンを描いたものなんだと何となくわかった。  私は鞄の中から、帰宅途中に買ったものを取り出した。仏壇の横の三面鏡を見て、四苦八苦しながら目にはめる。ついでに、おさげ髪をといてみた。  仏壇にあった母さんの写真と、良い友達であったふわ子とよく似た顔がそこにはあった。 「冬に生まれたから冬子。夏に生まれたから夏子。単純すぎだよ、母さん」  今思えば、ふわ子というネーミングも単純すぎだった。
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