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「中川、何をしてたんだ?」
私はさっき分析したことを、そのまま言った――絵を描いていました、と。
「この問題、解いてみろ」
この台詞まるで漫画みたいだなあなどと考えながら、私はおずおずと、顔をあげた。怒ってる。先生、すごく怒ってる。
そっと周囲を見渡してみる。笑ってる。みんな、くすくす笑ってる。
「この問題が解けるかと聞いてるんだ、それくらいはわかるよな?」
黒板に白チョークで書かれた円形は、『魔法少女アン』に出てくる魔方陣以外の何物にも見えなかった。いや、間違いなくあの漫画の魔法陣だ、と思った。
だけど、そんなことを言ったら十中八九、怒られる。それに、笑われる。
だから、私は決まってこう言わないといけない――わかりません。
そして、怒られる。授業を聞いてないから、落書きばかりしているから、外ばかり見ているから、寝ているから……、口を開けば次々と飛び出す怒声の数々。
先生、よくそんなに思いつくな、とこっそり感心する。天才じゃないかと思う。
ああ、先生だからか。先生は賢くなくちゃなれないから、きっと、すぐにいっぱい言葉が思い浮かぶんだ。
私にはそれができない。私は人と話すのが、苦手だ。
だから、怒られている間はほっとする。話さなくていいから。黙っているだけでいいから。
……だけど、いつまでも怒られているのは嫌だ。絵が描けないから。好きな漫画が読めないから。
どうかはやく、このお説教が終わりますように、と私は祈った。
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