一日目

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一日目

2007年8月1日 その日は酷く蒸し暑かった。 「もう!暑すぎる!こんなんじゃ日焼け止めも効かないわよ」 「仕方ないですよ、部長。夏真っ只中なんですから」 今日は埼玉にある私立B大学の映画研究会合宿の日。 毎年場所は違えど強制全員参加の合宿を行っている。 「でも、ホントに暑いですね。みんな体調崩さなきゃいいですけど」 「そうね…ここから病院まで行くにも二時間は掛かるし。新人は特に気をつけてね?」 映画研究会部長の長井真由美とヘアメイクの沢川詩織。 部長は長い黒髪が似合う善く言えば美人悪く言えばケバいお姉さんだ。文学部の四回生。我が映研の部長で監督だ。性格がきつ過ぎて何人もの部員が今年脱落していってしまった。 そんな部長のしごきに負けなかった新人沢川さん。見た目は派手な渋谷系ギャルだが性格は非常に真面目。男関係は派手らしいと聞いたが部内ではそんな感じは一切ない。心理学部一回生。 「ちょっと、早く荷物運びなさい!山田!」 「は…はい!すみません部長」 山田拓也。教育学部四回生。見た目は完全に体育会系だが我が映研自慢の脚本家だ。部長に頭があがらないのが不思議だが…それ以外に関しては非常に人当たりもよく部内のムードメーカーだ。 「すみません。部長、あたしなんだかクラクラするんですけど…少し休んでかまいませんか?」 「あら?大丈夫?日射病かしら?」 望月風香。映研の女優。見た目はいわゆるロリータちゃん。かなり変わった娘だ。しかしいざカメラの前に立つと、まるで別人になる。心理学部二回生。 「増田。先に風香ちゃん部屋に案内してあげて」 「はい。わかりました」 増田雄介。カメラ、編集担当。金髪ピアスブランド物で固められたホストのような男。何故こいつが映研にいるのかわからない。しかし性格は悪くないから…余計ムカつく。文学部三回生。 「増田。これ風香ちゃんの部屋の鍵」 「おぉ。わかったよ、勇男」 須賀勇男。最初名前が読めなかった。ゆうなんと読むらしい。勇気の男。名前とは違い彼はいわゆるヘタレだ。怖い話しが苦手らしく以前お化け屋敷に行った時腰が抜けてしまいお化けに抱えられて出て来た。爽やかな風貌とは大分掛け離れている男だ。映研の俳優で教育学部二回生だ。俺と同期で… 「おい。拓己、お前風香ちゃんの荷物持てよ」 「はいよ」
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