【第一章 元ヤン教諭と泣き虫幽霊】

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「ただいま~」 午後六時、麗しき乙女の帰宅。 なんちゃって。 靴を直し、歩き慣れた廊下をゆっくりと歩いていくと台所から声が聞こえた。 「お帰り、姉貴」 声の主は私のとってもかわいい高校生の弟だ。 両親は共働きで帰りはいつも九時を過ぎる。なので夕飯はいつも弟が作っている。 「××く~ん。お腹すいた~」 私が人参を切っている××に覆いかぶさるように寄り掛かる。 「馬鹿! 包丁持っているのに危ないだろっ!」 そう言って、私を無理矢理ふり払う。 あぁ、(わたしが)包丁で怪我しないために……。 (俺が)包丁で怪我したら明日のバスケができないだろ……。 姉弟の考えは微妙に合わないものだ。 む、人参、玉葱、じゃがいも、おにーく。 この食材によって作られる料理。それは――――。 「我が弟よ! 今日の夕飯はカレーライスだな!」 「シチューだよ」 北海道濃厚クリームシチュー・改のルーを指差す。 「…………うん。美味しいよね。シチュー」
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