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追っ手を見事に倒した後、シュンはこちらに振り返る。
僕は一瞬びくついて後退りするが、シュンは優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
初めて…な筈なのに、
初めて逢った筈なのに、
胸の奥が変にチクチクする。
締め付けられるような、
僕自身良く分かんないけど、胸が痛かった。
シュンはそんな僕に「大丈夫か?」って言って、抱きしめた。
伝わる体温が、無性に心地よくて涙が出てきた。
僕は孤児で、両親も僕がまだ6歳の時死んだ。
それから5年と半年…
何度も競りにかけられ、人間をお金で売買する世界で…必死に生きていた。
人の温かさとは無縁の世界にずっといた僕は、
抱き締められる事がこんなにも心地良いものだということを忘れてた…。
僕が求めていたモノはきっと…これなんだ。
今までに出逢った主人には無いものをこの人は持ってるんだ…。
無縁に嬉しくて、悲しくて、今までの苦しみから解放されたかのように、
僕はシュンの胸で思いっきり泣いた。
月の光だけが照らす闇夜の中で…。
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