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僕は待っていた。
また遊ぼうと言って帰っていった少年を・・・・・・
「遊君は・・・・・・どうして来ないのかな?」
僕は待っていた。
また遊ぼうと約束した日から、一ヶ月以上もずっと。
「はぁ」
僕は空を見上げる。
少し前から雪が降っていた。
冷たくはない、そんな感覚はとうの昔になくなっている。
「家、行ってみようかな?」
一度だけ、別れてから後をつけて家まで行ったことがあった。
「ここにいても仕方ないし」
一度も触れあったことはない、でも・・・・・・いつもいっしょにいた大切な友達。
「行こう」
僕は歩き出す。
遊君の家に向かって、
「君は誰?」
「え?」
「ねえ、誰なの?」
一年前、誰にも相手にされずうずくまっていた僕に話しかけてくれた君。
「僕は・・・・・・『れい』・・・・・・だよ」
「れい?、かっこいい名前だね」
「えと」
「よろしくね?」
「・・・・・・うん」
そして、最後に会った日、
「じゃあね、れい」
「うん」
「また・・・・・・遊ぼうよね」
「うん、もちろんだよ」
そう言って、君は次の日から、来なくなった。
遊君の家につく。
「いるかな?」
僕は中庭に潜り込む。
遊君のお母さんらしき人が窓を開けて洗濯物を干していた。
「おじゃまします」
僕は窓から家に上がる。
遊君のお母さんは僕の声に答えず洗濯物を干していた。
「遊くーん」
僕は遊君を呼びながら、ある部屋に入った。
「あ・・・・・・」
そこで僕はあるものを発見した。
僕は走っていた。
「そうだったんだ」
部屋で見たもの、それは仏壇とそこに飾られた・・・・・・遊の写真。
「もう、遊君は」
僕は公園にたどり着く。
「え」
そこには、遊君がいた。
「ごめん、約束破って、すごく遅れたね」
遊君が困った顔をする。
その顔は間違いなく遊君だった。
だから僕は、
「う・・・・・・ううん、また遊ぼう、だったから、今から遊べば破ってないよ」
と言った。
遊君は笑顔になって、
「じゃ、遊ぼ?」
僕も笑って、
「うん!」
遊君が僕に手を差し出す。
僕は初めて、遊君に『触れた』。
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