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私は2ヶ月前、自分自身を棄てた。
もう、私のことを私の名前で呼ぶ人はいないだろう。
悲しくなんてない。
私は私が大嫌いだったから。
2ヶ月前、姉が死んだ日から私は姉になったの。そんなつもりはなかった。偶然が重なってしまっただけ。
私が認めてもらえなかっただけ。
一卵性双生児だった私たちはいつでも比べられた。でも、もうそんな心配しなくても良い。
私は自由になったんだ。
大丈夫、全てはうまくいっている。
「おはよう朱希(あき)。」
母は私をそう呼ぶと笑顔を向けてきた。それは私の姉の名前。
『おはよう、ママ。』
笑顔を作り、挨拶をかえす。ほら、簡単だ。誰にもバレていない。
「沙希(さき)に挨拶した??」
沙希…それは私の本当の名前。しかしそれは私を呼んだものではない。
『いまからだよ。』
私は文壇の前にすわると線香をつけ少し雑にさした。
『おはよ、沙希。今日も朱希は元気だよ。』
と手を合わせていった。まるで妹を思う優しい姉のように。
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