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1000と1のため息
「おいもみじ」
───別に、呼び捨てされる事も、凡そ男らしく無い呼び名も、嫌では無い。
ただ───、
「…もう少し離れて話せないのか??」
景慈本人が言うのだが、俺の声はかすれた、低過ぎた声で聴き取り辛いと───だから側に来て、耳を傾けて、じゃないと声が拾えない、らしい。
に、しても。
景慈の場合、どうこうしても距離が近過ぎなのだ。
俺の右肩に頭をぴたりと寄せて、掌は俺の懐に潜り込ませる。
こいつの行動は全て奇行と言えるから、景慈自身に諦めがついてる俺は、酷く拒みたくなる程では無いけれど。
「気にするなよ、スキンシップも兼ねてるんだから」
非常に爽やかな笑顔で、景慈は言葉を返す。
口八丁手八丁。
こいつに今更何を言ったって通用なんてしない。
「…あぁそう」
今のはまるっきり意味も説得力も無い言葉だったけど、言い返す気力も失せてしまう。
ため息ひとつ。
それが俺と景慈の関係。
**1000と1のためいき**
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