1000と1のため息

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「───」 彼に付き合わされて、ため息を吐く数は俺の方がうんと多い。 脳天気とも言える景慈のため息なんて聞いた事はついぞ無かったから、意外過ぎてついつい彼の顔を覗き込んでしまった。 肩を叩きもせずに。 「あぁ───、」 振り向く時、少し肩をあげた。 きっとほんの少しだけ驚いたんだろう。 そう思うとなんだかおかしくなってしまった。 些細な事には心を揺さぶられない景慈が、なんて思って。 「ごめん、夢中だったか??」 込み上げた笑いを喉の奥にしまい込んで、俺は尋ねる。 景慈は首を振って、三分の二迄読んでいた小説を閉じる。 「そんな事無いさ、丁度退屈してたとこだ」 帰ろう、そう言って景慈は俺の袖を引っ張った。 ** 景慈はとにかく捉え難い人間だ。 それに付き合える人間は少ないだろう。 まぁ、それ以前に───景慈は気に入った人間にしか付き合いを持ち掛けないから、周りが彼を理解したくても、理解させてくれる距離まで近付けさせないのが事実だが。 「何見てた??」 捉え難いから──、だから違うと思った。 夕陽なんかで景慈の心が奪えるんだろうか。 「ん、最近夜が来るのが早いなぁ、と」
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